鏡を見ながら弾こう
大学の練習室には、大きな姿見があることが多い。鏡のある部屋で練習するときには、いつも至近距離に鏡を持ってきて、それをずっと見ながら弾いていたりする。
鏡を使った練習で一番よくわかることは、身体感覚と実際の姿勢には大きくずれがある、ということだ。特にスポーツや体操などが苦手な場合、このずれが顕著に出てくると思われる。
自分も身体操作がとても苦手なほうなので、このチェックは必須だ。バレエダンサーは全面鏡張りの部屋で練習するのに、ピアニストはめったにしない、というのは奇妙な話。
鏡を見ながらチェックすることはいろいろあるが、骨格のことは特に気にするとよいと思う。
まず、骨盤が正しい位置にあるか。反り腰、へっぴり腰になっていないか。
そして鍵盤を見るときに大きく首が前に出てしまう癖、これは何度確認しても取りづらい。
鍵盤を見ているとどうしても意識が「見る対象」に行ってしまうから、「見る自分」への意識はどこかおざなりになる。
でも、長時間練習する際に正しく骨が乗っていないと、明らかにガタが来るのが分かり、ちょっと怖かったりする。
鏡を見ていると、自分の弾き方が「指主導」なのか「肩甲骨主導」なのかははっきりとわかる。
たいていの場合、肩甲骨主導のつもりであっても指主導になってしまって、指がバタついていることはよくある。
腕の動きを利用しようと頭で思っていても、ミスタッチを恐れる指が先にポジションを取りに行ってしまっているのだ。その場合、鏡越しに腕自体が動いておらずガッチリ固まっているので、はっとする。
鏡を見ながらであれば、どうやったってミスタッチをするから、そこのメンタルブロックが取れるのもいい。さあどんどんミスタッチしよう。